2015年8月9日日曜日

なにがそうさせている ビジネス編7

「なぜできないのか」

そもそも、これが過去10年以上に渡って考えてきたテーマの一つです。
頭では解っている。理屈では理解している。それなのに、いざやろうとしても、出来ない。続かない。

書店をしていた時の1995年ごろから、分類わけされた自己啓発の棚からが本が溢れていきました。
まだ今ほど本の分類が細分化されていなかったので、自己啓発という棚もそれほどスペースがなく、内容も大雑把なくくりとしてある感じでした。
もう一つ、ビジネス書という分類があり、こちらも明確なくくりがないので、何となく仕事に関わる本という感じで選別していました。
古くからカーネギーの「人を動かす」や松下幸之助の「道をひらく」などが、自己啓発の棚に入っていたりしました。

当初は、個人の成長や自己改革を促すのに役立つ本という捉え方で、自己啓発本というくくりにしていました。ビジネス書は直接仕事に関わるノウハウであったり、技術的な要素のあるものという捉え方で分類しました。
ところが、だんだんとその境界が曖昧になっていきました。
いわゆる、成功本の類いがぞくぞくと出始めた時からではないかと思います。
仕事の成功と自己改革が結びついていくことで、どちらの分類にも当てはまる本が続出します。ビジネスにおける成功者達の手記も数多く出版されていきました。そういう本を読んでいくうちに、どうやら誰もが同じ事を言っているように感じられてきました。

成功者たちは、自分が成功するまでのくだりを詳細に書いてくれています。それを読むと、確かになるほど、と頷けることばかりが書いてあります。
しかしそこで思った事はありませんか?
「その人だから出来たんじゃないの?」
「それはよく分かるけど、自分には出来ない」
「なんかそんなに運良くいくなんて、有り得ない」
そんなふうに考えたことはないですか。
そして「これは自分には合わない。でも自分に合った事例もあるんじゃないか」とまた次の本に手を出す。

始めの頃は自分もそんな気分になったことがありました。
人それぞれ環境も違うし、性格も違うんだから、同じ事は出来ないよ。そう思いました。
でも、これは当たり前ですよね。
同じ事をしようとしても出来るわけがない。それなのに、その人がやっていた事を真似しようとしたのですから、出来なくて当然です。
ノウハウや技術を真似ることは出来ます。しかし、本質はそこではありません。
成功者達が共通して言っていたのは、意識の持ち方だったのです。

中小企業診断士による販売促進のセミナーなどでは、さまざまな成功事例や、取り組みのアイデアなどの提案がされたりもします。正直、それらの事は沢山ある本の中に書かれていることだったりします。それに関しては知識では解っていることで、それよりも自分の店が来月の売上げをアップさせるための具体策は何なのか、商店主が知りたいのはそこです。
しかし、そんな特効薬みたいな方法はありません。むしろ、ここに至るまでにあったであろう、変化のサインを見逃したか、無視した結果が現状を招いたということに気付くべきです。
病気と同じで、病状が悪化してしまったら、劇薬に頼るか、手術するか、いずれにせよ痛みが伴うような変革を迫られることになってしまいます。
そうなってから、変わろうとするから、簡単ではなくなってしまうのです。

知識を得ることは大切です。多くの知識がなければ新たな発想も生まれてこないでしょう。ですが、再三繰り返してきたように、知識を得たから出来るというわけでもありません。それなのに、どこかに上手く行く方法があるのではないか、まだ知らないテクニックがあるのではないか、と情報をかき集めていけば、答えが見つかると思ってしまうのです。

始めにそこに疑問を持ったのが、やはり本を売っていた時のこと。
1995年に大ベストセラーとなって、一大ブームを引き起こした「脳内革命」という本が出版されました。
店頭に並べると、みるみるうちに売れていきます。
「脳から出るホルモンが生き方を変える」
脳内物質やプラス思考という言葉が流行となっていきました。
410万部も売上げ、続いて発売された「脳内革命2」も100万部を超えた売れ行きを記録しました。

これだけ売れたということは、本を読んで生き方の変わった人はさぞ大勢いることだろう。
そう考えても不思議ではないはずです。それなのに、世の中が変わったという気配は全く感じられません。
この後も生き方を変えるための本が数多く出版されていきます。
そして同様に売れていくわけです。
商店街の一角にあった当店では、顧客の大半は固定客になります。ということは「脳内革命」を買った人もまた次の本を買っている、ということになります。
つまり、本を読んだ人は何も変わっていないということです。
変わったのなら、似たような内容の本を買う必要はないはずです。それなのにまたベストセラーが生まれていくとは、どういうことなんだろう、と考えた時に、人は知識を得たから変わるわけではない、という結論に至ったのです。

同様なことは、ダイエット本にも言えました。
毎年さまざまなダイエット方法の本が出版されています。そしてそのどれもが売れていくわけです。前述のように、固定客が主ですから、買いそうな人には、いいかげん行き渡っていると考えても良いはずです。
それなのに、また新しいダイエット方法と謳った本が出ると、またまた同じぐらい売れていく。
去年もそれだけ売れたのに、今年になってもまた売れていく。
これはどう考えても、だれもダイエットしていない、としか考えられないじゃないですか。

結論が確信になって、始めの「なぜできないのか」を追求することになります。
そのためには「こころの仕組み」を知る必要があったのです。

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