「問題という問題」
ビジネスの現場において問題となることは何でしょう。
業績の問題であれば、売上げが上がらない。
はたまた人手不足である、激務である、人間関係がうまくいっていない、などということが挙げられるでしょう。
売上げの問題解決には、これまで述べてきたように、今までの固定観念から抜けだし、変化に対応する方策を実行することにあります。
変化することを恐れ、今までの慣習に囚われているところに問題が発生しているのです。
人手不足や仕事が激務であるというのも、その状況が今までとは違ったものに変化していることへの対応策に問題があると言えます。現状のやりかたが間違っているというのに、それを修正しようとはしないから問題が発生しているのです。
では、人間関係はどうでしょう。
基本的な構造は一緒です。人と対するときにどのような接し方をしているのか、そこに問題があるのです。
接し方が変わらなければ、問題となることは解決しません。
そもそも問題とは、今まで上手くいっていた、もしくは何もなかったところに、不快な状況が生まれたという現象です。不快というのは主観的な事です。人は慣れ親しんだ現状が変化することに不快感を覚えます。
倫理的に良いことだとしても、現状が変わることを躊躇するという心理が働きます。
変わる事への恐れ、慣れ親しんだものを手放す恐れ、未知な状況への不安、こういった恐れと不安が無意識の中に形成されていきます。
売上げが順調に推移している場合は、現状の仕事のやり方で進めていれば問題はないと意識しています。
上手くいっているやり方を継続していくことが成功である、という認知が生まれます。
しかし、実際は細かな環境の変化に対応し、業務を修正していく事で現状の維持ができるのです。
変化しない所に留まろうというのは、楽なことではなく、実は衰退の始まりなのです。
人は年齢を重ねるごとに老いていきます。
肉体の変化と共に、精神的にも変わっていきます。
絶頂の時期にやっていた事に固執するというのは、肉体が若いときのやり方に固執する事と同じです。
こどもの頃の考え方が、大人になっては通用しない事はだれもが理解していることでしょう。
考え方を変えていくからこそ、周りの社会に受け入れられる生き方ができているのです。
つまるところ、この考え方を変化させない所に、問題は生じると言えます。
または、認知の捉え方によって問題となるかどうかが決まる、とも言えます。
先人の成功者達が「ピンチはチャンスである」と言っています。
これは「変化の状況が訪れたことは考え方を変えるべき時である、だから問題ではなく解決の糸口がそこにあると捉えることである」と読み解くことができるわけです。
こうして見ていくと、問題とは人が作りだしているものであることが解ります。
今までとは違った現象を捉えて、それを問題とするかどうかは、その人自身の捉え方であるのです。
ことさら問題意識が強いというのは、現状維持に固執しているという現れであると言えます。
変化することを前提として、あらかじめ対応策を講じておけば、それは問題とはならないはずなのです。
これはビジネス業務に限ったことではありません。
人間関係においても、捉え方という部分で問題は生じています。
自分の環境や精神状態が脅かされる状況を、人は問題と捉えます。
価値観の違いや、意見の相違、侮辱、非難といった行動は、それぞれの持つアイデンティティが違う事で生じるものです。
自分の価値観に従わせようとか、自分の正当性を誇示しようとか、そういう心理が働いていると言えます。
自分自身の考えに固執すればするほど、他人の考えとの間に摩擦が生じるのは当然です。
皆、自分のことは正しいと強固に思っています。しかし本来、正しいも間違っているもありません。考え方が違うとう事実があるだけです。
相手が間違っていると思えば思うほど、それは自分にとっての問題となります。自分の現状を固持しようとして、相手を変えようとするからです。
そうやって自分が変わらないことに固執しているのに、相手は変えようとする。実は相手だってそうやって同じ事をしている、ということに気が付けば、なんと不毛な諍いであるかが解るはずです。
自分自身が創り上げてきた考え方や概念は、無意識に蓄積されてきています。しかもそれは自分にとって、絶対的に正しい事として認知されています。しかし同じように他の人もそうやって自分を形成しているのです。
他を認めないということは、自分自身も認めていないとも言えるのです。
自分と他者との違いが、いったいどこにあるのか。自分が固執する考え方や概念が、なぜ他の人とは違うのかという事を理解すれば、闇雲に自分だけが正しいとは言えない事に気づきます。
違うという事実を受け入れれば、そこには問題は発生しません。自分の領域とはどういうものなのかが理解できれば、相手の主張は、単に自分の持つ概念との違いを表しているだけだからです。
それに対して、どの様に対応するかは自分自身が決めることです。
今まで通り自分を脅かす問題として対応するのか、それは自分の中にあるものとは違う概念として受け止め、変化に対応する自分自身の解決策とするのか、自分で選択するだけです。
つまり、問題は起こっているのではなく、人が作り出しているのです。
問題とする捉え方が違えば、本来そこに問題は存在しないのです。
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