2015年8月10日月曜日

なにがそうさせている ビジネス編8

「プラス思考の落とし穴」

「脳内革命」以後、プラス思考やポジティブシンキングがもてはやされていきました。
精神論や根性論のような気持ち優先の考え方に変わる、思考のコントロールという理論的な考え方が注目されるようになりました。
プラス思考やポジティブシンキングのような前向きな考え方というのは、気持ちが高揚していくので、行動しやすい状態を作ります。
行動を起こせば、必ず何かしらの変化が現れます。
その意味では、停滞した現状から抜け出す方法として間違いではないでしょう。
しかし、変化というのは、捉え方によって良い方向と悪い方向の両側面を持っていると言えます。
全てが良い方になればいいのですが、そういうわけにはいきません。
ところが、過度のプラス思考になると、良い方しか見ないという偏った意識に囚われる危険があります。
その場合、変化によって生じた悪い面を、無視するとか、上手く行かなかったことは、無かった事にする、という誤った選択をしてしまう可能性があるのです。

確かに、プラス思考やポジティブシンキングが有効であるとは言えますが、ただ闇雲に良いことだけ考えればいいんだ、という理解をしてしまう危険性があります。悪い事が起こっても気にしない、失敗しても次がある、こう考えると前向きに聞こえますが、実際はただの慰めでしかありません。
問題は起こっているのに、解決に繋がっていない、または原因究明を疎かにする。
常にそういった思考で本質の先送りをしてしまうと、いずれ大きな問題となってしまうのです。
その時に初めて問題と直面して、自分自身の行いを責めてしまうことになると、こころに大きな傷を作ってしまいます。
気持ちの落ち込みが激しいと、うつの症状になる可能性も出てきます。
前向きな姿勢だからといって、そういった負の萌芽を無視したりしていないか注意しなければなりません。

プラス思考という言葉からも、プラスの方向だけ考えるというふうに取られがちですが、私が考えるには、根拠のないマイナス思考に陥らないことを指していると思います。不毛なマイナス思考をプラス思考で相殺するという感じでしょうか。
何か行動を起こす前に慎重になるのは当然のことです。
そもそも、一分一秒先もどうなるか解らないというのが、この世の中の仕組みです。
人は行動するとき、ある程度の予想の元に行動していると言えます。一度行った行為は経験済みですので、安心して行動できます。しかし、未経験の事を行う場合は、予想される結果をあれこれシミュレーションしなければなりません。
予想する結果に大きなリスクが伴う場合は、慎重にならざるを得ません。
自分に降り懸かるリスクが大きいほど、行動は起こせなくなります。

問題となるのは、そのリスクを過大評価してしまう場合にあります。
先の解らない行動を取るということには、恐怖心が働きます。その恐怖心に囚われると、現実的には起こる可能性の低いはずの状況さえも思い描いてしまい、余計に行動出来なくなっていきます。
これをやって失敗したら、会社をクビになってしまうのではないか、など想定される最悪の事ばかり考えてしまったり、自分が悪者にされてしまうんじゃないか、といった被害妄想に陥ったり。
精神的にその傾向が強くなって行った場合は、不安障害といった症状に至る可能性があります。

時間の中で生きている限り、未来はどうなるか解らないのが本質です。
それでも生物は生きていけるように出来ています。明日の不安ばかりを見ていたら絶望しかないでしょう。人間そこはうまいこと出来ているもので、先の見えない現実はあまり気にしないように作られているようです。
ただし、考えるという万能な知能を手に入れたことによって、不安や恐怖も自分で作り出すことが出来るようになってしまいました。
マイナス思考は不安感や恐怖という思考の暴走です。
普通の状態や客観的な判断が出来るようなら、考えなくてもよいことなのです。
そういう暴走した思考をコントロールする、といった意識が求められるものです。

そういう意味では、過度なプラス思考というのも躁思考の暴走と言えます。
極端な例で言えば、ギャンブルに投資するようなものです。
プラス思考も、マイナス思考も、適切な範囲で活用するのであれば有効な方法です。プラスとマイナスの軸がどちらかに振れすぎることが問題なのです。
思考においても、自分でそれをコントロールしてバランスのよい考え方を身につけるというのが本来の意識改革であると思います。

万物はバランスの中で成り立っています。プラスの時もあればマイナスの時もあり、どちらかが永遠に継続することはありません。
ビジネスにおいても、成長期が頂点になれば減衰が始まります。これは万物の法則です。
衰退に逆らうのではなく、違う物に変化するということが求められていることです。


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