2015年8月4日火曜日

なにがそうさせている ビジネス編2

高度経済成長の頃は、ものを作ればどんどん売れた時代でした。
今ではどこの家庭にも当たり前にある、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などは、昭和30年代には家電三種の神器と言われて、とにかく所有することがステイタスだったわけです。

この時代、ものを持つことは生活が便利になっていくことでした。また、便利になることは、豊かであるという意識が根付いていきました。
まず、一般家庭にはものが行き渡っていきます。ほぼ誰もが同程度の水準でものを所有できる状況が訪れます。昭和40年代にはテレビのない家の方が珍しくなっていたことでしょう。
次に目指す所は、生活の豊かさです。豊かさは利便性の追求でもあったことで、製品は、より高性能を目指して開発が促されます。
他社より少しでも優れたものを作るのが、売れるもの作りのベースとなります。

所有の欲求と高性能への欲求が、昭和の時代を通じて、ものを買うお客の心理に根ざしていたはずです。他の人より沢山持っている、他の人より良いものを持っている。そこに自分自身の価値も投影していたところがあると思います。
昭和世代の人には、良いものへのこだわりと、ものを持っている事へのこだわりが、こころの奥にあるのではないでしょうか。
ものを捨てられないという気持ちも、こういった心理が働いていると思います。

平成の時代が訪れると、もう一般的に必要とされるものは、どこの家庭にも十分行き渡っていました。しかもどの製品も実に高性能です。製品そのものの出来に優劣を付ける部分は殆どありません。
この頃から、企業は製品そのものの良さを伝えるのではなく、その製品を使うことで得られる満足感を製品価値として謳うようになります。

それまでは、持っていなかったから買う、というのが購買心理でしたが、もう持っているものを買い換える、もしくは持っているのに買い足す、という状況になっていきます。
所有欲と性能価値だけでは、購買意欲の刺激には繋がらなくなったのです。

個人の欲求は、自分の満足感を満たすものの価値と捉えるようになりました。
そうなると、満足感という価値観は人それぞれという事になります。
ここに、価値の多様性が生まれてきました。

全ての分野において、昔のようなビックヒットが生まれないのは、この欲求の多様性によるものだと思います。
平成の年代の人には、あまり所有欲がないと聞きます。生まれた時には全てのものがあったから、特に必要とするものはないという感覚なのでしょう。ものを持つことよりも自分が満足することの方が優先であると考えるようです。

バブル後の不景気からは、よりこの個人の満足度が購買欲求の決め手となっていったように思います。バブルに浮かれて簡単にものを買えるという感覚から突然に緊縮経済になった感じで、買い控えが起こります。しかし本来買う必要のないものまで買っていたのがバブルの時代だったのです。
冷静に考えたら、特に必要なものはない、ということに気付いたのです。
そのため、それまでの販売感覚では商品が売れない状態になりました。

そこからが、どうしたら売れるかと中小企業が頭を悩ませることになったのです。

あるとき、商店街の集まりで、専門家を交えて何グループかに分けて販売促進の取り組みを勉強し、各自発表するという企画がありました。
各商店街で一つのグループを作り、それぞれの取り組みについて、後日プレゼンテーションを行い、成果を競うというものでした。
結局私が、本番でプレゼン発表をするという大役を担うことになるのですが、まずは15人程度でディスカッションが行われました。自分たちのグループではS・W・0・T分析という手法を使い、各店の分析を元に販売対策を考えるという流れに落ち着きました。

S・W・0・T分析とは、各自の強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因分析し、経営戦略を練る手法として割とポピュラーなものです。

自分の店に当てはめて分析し、それぞれの要因を考えていると、ある考えが浮かんできました。
「そもそも、ものを売らない、と考えたらどうなんだろう?」
この考えが、ひとつのキーワードして強くこころに残っていくものとなったのです。

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