2015年7月30日木曜日

こころの健康と臨床 摂食障害

さて、今回は女性にとって避けて通れない話になりそうです。
そうです、ダイエットとは切り離せない問題、摂食障害についてです。

現代はダイエットブームというか、人格否定にまでなりかねないほど、体重を問題視する傾向がありますね。
女性に限らず、男性でもメタボとかいって太っていると、自己管理が出来ないやつ=仕事も出来ない、みたいに思われている場合もあるんじゃないでしょうか。
見た目だけの問題ではなく、太りすぎ、痩せすぎは、身体に影響を及ぼします。
メタボリックシンドロームなどでは、命に危険性のある疾患に繋がる恐れが増大します。また過度な食事制限を重ねると、ホルモンバランスの変調、栄養不足などで、これも病気を引き起こす要因となります。
どちらにしても、行きすぎると病気が待っているということを十分理解しましょう。

摂食障害には
    神経性食意不振症:AN(Anorexia Nervosa)以下ANとします。
    神経性過食症:BN(Blimia Nervosa) 以下BNとします。
と定義されています。

ANについては、体重増加の拒否、体重が増える事への恐怖感、体重・体型に対する過剰な自己評価、無月経など。
サプタイプとして、過食/排出型という、むちゃ食いをして吐く、とか薬を使って強制排出を繰り返すとかの行動をするケースもあります。食べたら、吐けばいいんだという誤った認識に囚われて、指に吐きダコが出来る程になってしまう。
最初は、「これならイケるじゃん」みたいに思うのかもしれませんが、正常な行為ではないので、身体に影響が無いわけはありません。
肉体というのは、習慣化された行動に適応しようとしていきます。身体を鍛えるのも、肉体に負荷を掛けた分だけ慣れていくことで強靱になっていくわけです。ただし、急激に負荷をかけると壊れてしまいます。
過度な嘔吐や排泄行為を習慣化していくと、肉体はだんだん摂取する機能が低下していきます。せっかく食べたものから、栄養を吸収することが出来なくなってしまいます。それは本来生存するために必要な栄養まで摂取出来なくなる恐れがあるということです。
つまり、太らないのではなく、太れない(肉体を維持できない=機能破壊)身体になってしまいます。
過度なダイエットの危険性はここにあります。
身体が受け付けなくなってしまった時、今度は食べようとしても吐いてしまう。もう自分の意思ではどうにも出来なくなってしまうのです。
実はこのANについては、精神障害の中でも最も致死率が高いと言われています。
食事を摂ることは、生きる上で欠かせない行為です。生きる為のエネルギーは食物からしか摂ることは出来ません。
その命に関わる行為を抑制していく事は、死に向かっていることと同じなのです。

ではBNの方(過食)はどうなのかというと。
何らかのストレスによるむちゃ食いがエスカレートする。明らかに食べ過ぎ。
食べることを制御できない、自分でコントロール出来ない感じがある。
むちゃ食いした分を嘔吐、排泄行為で補おうとする。
過食の後に極端に絶食したり、過度な運動をしようとうする。
こういった行為に及んで、自分ではどうしようも出来ない状態になります。
BNの方が治療予後が良い傾向にはありますが、これがANに発展してしまう場合もあるので油断はできません。
例えば、いっぱい食べても太らないね〜、などと言われると嬉しくなって、嘔吐行為を正当化して繰り返しているうちにANの症状になってしまう、ということも考えられます。

過食については、食=快楽という肉体の基本的な性質に根ざした部分もあります。
嫌なことがあったから食べる。食べるのは快楽だから心地よいわけです。負のストレスが掛かると、その分快楽を得ようとして食に走る。他の事でストレス発散が出来ていれば、そうはならないかもしれないのです。

ANもBNも一般的にダイエットから発展して障害に至る場合が多くあります。
どちらも、自己の体重やスタイルに対する過剰な認知によるものです。
TVやマスコミのメディアや世間などが、痩せていなければダメというような認識を与えてしまっていますが、そのような価値観に振り回されて、身体を壊すようなことの何が正しいのでしょう。病気になった人を羨むようは人はいないはずです。
体重にしても、人それぞれの肉体に合った状態が正しいわけです。
全てにおいてバランスの整った肉体というのが、一番美しいというのが正しい価値観ではないかと思いますね。

しかしながら、ダイエットという甘美な誘惑には誰もが惑わされるようです。ダイエット産業などとも言われるわけですから、そこには相当な利益関与があることでしょう。経済効果としては無視できない事ではあります。
だからといって、過度なダイエットに踊らされるのはどうなんでしょうね。
急激なダイエットは、ほぼ間違いなくリバウンドを起こします。
それは肉体がそうなっているからです。
急に食べるのを制限すると、確かにカロリー摂取はできなくなるので、体重は落ちます。さらに運動をすることで、体脂肪の燃焼等で引き締まるのは当然です。
急に栄養摂取量が減ると、肉体の方はびっくりして、これは栄養補給を急がなくてはならない、と脳が指令を出します。
ダイエット期間が終了して、また普通の食事に戻ったときに、脳はこの機会を逃してはなるものかと、少ない食料からでも最大限の栄養補給をしようと頑張るわけです。
そして、また訪れるかもしれない飢餓状態に備えて、せっせと栄養を溜め込もうと働きます。
ダイエットが終わった後の身体は、備蓄食料を吐きだして、すっからかんになった倉庫の状態なので、もう食料が入ってくるのを手ぐすね引いて待ち構えているようなものです。
「一時はどうなるかと思ったけれど、不良在庫まで吐き出せたよ、良かった良かった。これでまたいくらでも入るぞ」
なんて声が身体から聞こえてきそうです。
本当は、この不良在庫を入れていた倉庫を処分するのがダイエットでしょう。でも、倉庫を自体を処分するのは、それなりに時間もかかるという言うことではないでしょうか?
お手軽なものには、必ず裏があるって事を、人生の教訓として肝に銘じておきたいところです。

0 件のコメント:

コメントを投稿