2015年7月27日月曜日

こころの健康と臨床 不安障害 −社会不安障害−

社会不安障害、あるいは社交不安障害とは、あまり聞き慣れないかもしれません。
これは主に対人不安に対しての障害です。
他者との関わりの中で発症するものなので社交不安障害という言った方がしっくりくるかもしれません。

具体的に対人不安とは、
”他者からの評価に直面したり、もしくはそれを予想したりすることから生じる不安状態、あるいは、他者からの詮索や注目、その存在によって引き起こされる動揺や混乱”
この状態の強度、頻度が強くなって生活に支障を来す状態のことを言います。

社会不安障害という言い方をすると大げさに聞こえるかもしれませんが、コミュニケーションの問題と捉えると、けっこうありがちな場面を思い付くのではないでしょうか。
他人の目が気になるようになったり、恐い先輩が居たりすることで、びくびくするとか、おどおどするとか。
人前で発表するなんて時に失敗してダメなやつと思われたらどうしよう。
子どもの頃は平気だったのに、思春期になってからだんだんとそんな意識が出てくるものです。それ自体は成長過程においては当たり前に起こることなのですが、その不安感が過剰になってしまったことによる疾患と言えます。

強度のあがり症、特定の人に相対すると緊張で硬直してしまう、または人と接するような場面全てにおいて恐怖を感じてしまうという例が挙げられます。
また、そういった不安感がつのることで、身体的な症状(動悸、息切れ、発汗、めまい)などが引き起こされて、パニック発作も併発するという場合もあります。
他にも、不安感を抑えようとして、アルコール依存に陥るというケースも通常の2倍以上の確率で確認されています。

精神障害全般にいえることですが、この社会不安障害が起こる原因というのもはっきりと特定されてはいないのが現状です。こころの問題は複雑な要因が相互に影響しているものなので、限定された原因というのは導き出すのは困難であるといえます。
今のところ、学習経験、遺伝的要因、家庭環境が互いに関連した中で引き起こされる、というのが社会不安障害の原因にあるのではないかと考えられています。

社会不安障害の治療法として薬物療法は有効です、また不安や恐怖に対してのカウンセリングを併用していくことが、治療効果の持続につながります。

この社会不安障害の要素としては、日常の中にもよく見られるものがあると思います。

「ちょっと自意識過剰なんじゃない」とか
「そんなの被害妄想だよ」とか
「誰もあんたの事なんて見てないよ」
「みんな気にしてないんだから大丈夫だよ」

こんな会話、けっこう聞きませんか?
でも、本人にとっては、どう思われてるか不安でしょうがないのです。
周りのみんなには、「こいつダメだな」と思われているんじゃないか。
励まされても、「にこにこしてるけど、心の中では私のことを笑ってるんじゃないの」とか、相手が考えていると思い込んでしまう。これを投影と言います。

自分の中でネガティブなイメージを想定して、あたかも周りの人もそう思っているに違いない、と思い込みます。そう思われている自分に自信を無くして、卑屈になり、またそれを見た周りの人のネガティブな評価をイメージしてさらに自信を無くすというスパイラルに陥ります。

問題は、最初のネガティブなイメージは自分自身が勝手に作り出したものである、という認識の欠如にあります。自分が思うほど周りの人は何とも思ってない、というのが事実なのですが、なぜかそう思えない。

これには、日本の社会的集団意識が影響している部分もあると思います。
他人に何か言われるのが恐い。人と違うことをしてはいけない。目立ってはいけない。こういった他者と自分という関係性に必要以上に敏感であると思います。
最近はとにかく「空気を読め」という言い方でばっさり切り捨てられている感じがありますが、そういうものに縛られている自体がおかしな事だと、誰も言い出しませんね。
こういうこと言うと、「空気を読んでない」と非難されちゃうのかな?
「空気を読むとは、あうんの呼吸によりお互いの調和をとり、和を持って尊しとなす、という古来より受け継がれる日本人の美徳なのである」という集団的自衛権を発動されちゃうかも。

逆にアメリカとかなら、自分の意見を言えないやつは評価されない、とか個性を発揮出来ない人間はイケてないとか言われると思います。国が違えばまったく逆の捉え方をされるわけです。

自分自身がその状況をどう捉えているのか、特に自己否定に繋がる要因はどこにあるのかを正しく認識することが必要です。案外とその部分は自分でも気付かない無意識な反応をしている場合があります。
例えば、人前に出て発表するのが苦手だとします。
実は小さい頃に学芸会で失敗して笑われたことがあったのですが、自分ではすっかり忘れていたとか。
何か失敗すると、いつもすごい剣幕で親に怒られていたという事があって、上司の前では必要以上に緊張してしまう、とか、自分の過ごしたきた環境の中で、何かしらの誘発させる原因があったります。
そういう外部からの影響によって、自分自身が受け止めたものを、あたかもそうで有るべきというような思い込みで自動的な判断を下しています。
これは、誰でも持っているもので、実はそうやって気付かず自動思考をしてしまっている事が日々の中にいくつもあるはずです。感情が揺さぶられるような出来事があったとき、一歩引いて自分を見つめ、なぜそういう気持ちが起こったのかに注目しましょう。そこで囚われているものに気付ければ、より穏やかに過ごせる自分を得ることができるようになるでしょう。

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