2015年7月29日水曜日

こころの健康と臨床 パーソナリティ障害 -境界性パーソナリティ障害-

最近インターネット上で飛び交うネット用語に「メンヘラ」という言葉があります。
こころに問題を持った人という意味合いで使われているようです。
どうやら「メンタルヘルス」が縮んで「メンヘル」となり、そのような人という意味で-erが付いて「メンへラー」→「メンヘラ」となったらしい、とあります。

とは言え、これはかなり曖昧な捉え方で、この言葉自体がひとつの意味を持って一人歩きしているところもあるので、一概にメンヘラ=精神障害者という括りにするのは危険に思います。
あくまで、ネット用語という特殊な使い方の中での言葉として捉えておきましょう。

ただ、どうやらそういう症状を指している障害としてはパーソナリティ障害が挙げられると思います。
パーソナリティ障害は、診断・統計マニュアルDSM-Ⅳ-TRによる分類では、A群、B群、C群と三つの症状に分けられています。
  • A群:風変わりな考え方や行動が特徴的。妄想性、シゾイド(統合失調症質)、統合失調型など。
  • B群:感情が激しく不安定なタイプ。反社会的、境界性、演技性、自己愛性など。
  • C群:不安感が強いタイプ。回避性、依存性、強迫性など。
どの症状においても、なんとなくそれっぽい気質というのは、誰でも持っているものです。
ちょっとそういう性格もあるよね、ぐらいの個性として捉えるのが良いと思います。

この中では、B群の境界性パーソナリティ障害を取り上げてみましょう。
この境界性パーソナリティ障害は、対人関係、自己像、感情の不安定性と衝動性が顕著に表れます。

    見捨てられる感:誰も私のことを見てくれない。
    他者への過度な依存感:私の事を愛してくれている。逆にどうして愛してくれないの。
    衝動的な自傷行為:むちゃ食い、浪費、無謀な行動。
    自殺行為:脅し、リストカット。
    気持ちが不安定:情緒不安定、強い不快感。
    慢性的な空虚感:何もやる気が起きない。どうでもいい感。
    激しい怒り、制御不能の怒り:急に癇癪を起こす、けんか。
    妄想、解離など
対人関係において障害となる場合が多いので、周囲の人が巻き込まれる可能性があります。
特に19歳〜34歳の間での出現率が高く、女性は男性の2〜4倍の割合という統計もあります。
若いうちの発症では、周りの友人なども対応する知識が乏しいという場合もあるでしょう。
お互いが辛い思いにならないよう、正しい知識を得ることは必要だと思います。

障害となるケースには基本となる3テーマが存在します。
(1)自分に自信が持てない
(2)生活の方向性が十分に定まっていない
(3)支えになる仲間が少ない
こう見てみると、なるほど若い人に起こりうる要素だと感じますね。
治療に際しては、基本的には自助努力が必要ですが、環境となる家族や友人の協力が重要になります。
自分に自信が持てない、という思いが大きいので、自分に対しての否定的な認識を改めるよう促していくことが必要です。
自信というのは、他人から与えられるものではなく、自分で獲得するものです。
自信を持てるような勇気づけをしてあげられるよう、手助けをするのが周囲の人の役目です。
無気力や無関心などの症状でうつ病とも捉えられがちですが、基本の3テーマがうつとは異なるので、薬だけでは改善しにくいのが特徴です。

発症のケースを追ってみましょう。

他者からの注意を過剰に捉え傷つく。自信喪失。
もしくは注意を非難と捉えて、ショックを受ける。
これによって、自己の全否定や侮辱された感が増大。(普通なら我慢できるレベル)

自己否定が過剰だと、自傷的行動、自傷行為に及ぶ。
侮辱感、見捨てられ感が過剰だと逆に反発して、切れる、八つ当たり、けんかなどにエスカレート。

それによって周囲との軋轢が生まれたり、反発や敬遠され孤立することとなり、後悔する。
そんな自分に自己嫌悪し、落ち込み、不安感やむなしさがつのる。

そして、悪循環に陥っていくことによって、障害に発展していきます。

特に怒りが高じて暴力的行動が引き起こされると、周囲との軋轢もより修復が困難な状況を作ってしまいます。
怒りの感情は瞬間的に暴走する状態を作ってしまうので、そうなる前にセルフモニタリングが出来るように意識を気持ちに向けているよう心がけると良いでしょう。
怒りとは、自分に及ぶ危険に対してどう対処していいか分からないという恐怖の裏返しです。
怒られているのが恐いから怒る、傷つくのが恐いから怒り返す、というような、自分の中にある恐怖を自分自身が理解しないうちに感情に引きずられて興奮状態になるのです。
興奮すると冷静な判断が出来なくなり、訳が分からないから更に暴走する。
どうですか、身に覚えはありませんか?

怒りを制御するには、怒りの前兆が芽生えた時点で、何がそうさせているかを理解することです。怒りの正体が分かれば怒ることはありません。
なんだか分からないもの、というのは恐怖に繋がります。そこで逃走闘争本能が働くと、逃げられる場合はそれでいいですが、逃げられないとなったら闘うモードに入ります。それが怒りですね。

怒りとは恐怖の表れである。

そう捉えていれば、周りで怒っている人を見ても、「あの人は何を恐れているのだろうか」と観察しているうちに、怒っていることも気にならなくなってきます。
これを習得しておくと、だいぶ楽な気持ちで居られるので、おすすめです。

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