2015年7月28日火曜日

こころの健康と臨床 不安障害 −強迫性障害−

強迫性障害とはどういうものでしょう。
まず、定義される二つの症状として、強迫観念と脅迫行為があります。
  • 脅迫観念:侵入的反復的に体験される思考、衝動、心像
  • 脅迫行為:脅迫観念に伴う不安や苦痛などを和らげる為に行う行動、心の中の行為
ちょっと解りにくいかもしれませんが、本人はそれが過剰であることも認識している場合があります。

誰にでもよくあることで、簡単な例をあげてみましょう。
今から用事があって出かける事になりました。
外に出てしばらく歩いたら、ふと玄関にカギを掛けたかどうか気になりました。
なんだか自信がもてなくなって、引き返して確かめます。
もう一度カギをかけたのを確認して、歩き始めます。
ここまでは、だれもが経験したことはありませんか?

しかし、あれ、本当に大丈夫か?カギを逆に開ける方に回したままにしたんじゃないか?
そういう思いが沸いてきて不安になり、また戻って確かめます。
そして確認したにも関わらず、もし空いてたらどうしよう、泥棒に入られたらどうしよう、と不安がつのります。
結局また戻って確認する、という繰り返しになって、出かけられなくなってしまいます。
ここまで来ると、確実に生活に影響が及び、障害となるでしょう。

最初の「あれ、カギ閉めたっけ?」とか「窓閉めたかな?、ガスコンロのスイッチ切ったかな?」というのは侵入思考といって、普通に思う事として経験します。しかし、そこから泥棒に入られるかもしれない、ガス爆発するかもしれない、という不安が増大して、どうしようもなくなるという状態になってしまうのです。
でも、現実的に玄関を閉め忘れたからといって、必ず泥棒に入られるということは、まずあり得ないでしょう。
明らかに異常な不安感や我慢できない思いというのが脅迫観念です。
そして、それを解消、または苦痛の緩和の為に、カギの確認を必ず5回やる、とかガス器具の元栓は全部閉めるという行動を取るというのが脅迫行為となります。

脅迫観念で一番多いのが、汚染に対してです。潔癖症という人はけっこういますよね。
次が病的疑念です。これ、バイ菌で自分が汚れて、病気になってしまうんじゃないか、というように汚染とセットとも言えます。
脅迫行為では、確認が一番、次が手洗いです。
前述のカギの確認のように、何回も確認しないと気が済まない。手洗いは汚染に通じますね。
また、自分だけじゃなく捲き込み型として、質問攻めにしてしまう、とか強制的にやらされるような場合もあります。

脅迫観念が表れると、それに対する脅迫行為をすることで、安心感を得ようとします。
パニック障害でも触れましたが、不安感というのは一時的なもので、時間が経てば自然に収まります。
しかし脅迫行為を行って安心感を得ようとすると、それをしないと不安であるという悪循環に陥ります。
その脅迫行為は過剰な行為であって、する必要はないのです。
それをしなくても大丈夫という体験を自ら進んで行うことが、障害の緩和につながります。

普通の人でも侵入思考であるところのネガティブな考えは当たり前に起こります。
ストーブを消し忘れて火事になるんじゃないか、とか運転中に赤信号でアクセル踏むんじゃないだろうか、とかちょっと危険な考えがふっと浮かぶようなことは誰でもあります。
どうやら、そう思った自分自身が本当にそれをやってしまうんじゃないか、とか本当にそうなってしまう、という思い込みが強い人が、強迫性障害に向かいやすいかもしれません。
物事をハッキリさせないと気が済まないとか、100か0で物事を考えてしまうようなタイプの人と言えます。
また、女性は、妊娠、出産で発症する場合があるといいます。これは守るものが出来たことでホルモンバランスが崩れたりすることが原因とも言われています。

考え方の中に、こうでなければならない、そうあるべき、というような誤った信念や強固なこだわりを持っていたりすることで、それにそぐわないものに対しての不安が過剰になっていきます。囚われている考えが強固であればあるほど、相反する不安感も増していくのだと思います。
自分自身の中にある、そのような部分を冷静に分析して、客観的な判断を持てるようになることが、思考の悪循環から抜け出ることになります。自分の思考の流れを書き出してセルフモニタリングをするという方法もあります。

一般的に、白黒つけたがるという気持ちがあるのは分かります。
でも、こっちが正しい、そっちが間違っているというのは、概して主観的なもので、見方が変わればどちらとも言えないというものだったりしませんか。白黒つけることが正しいというわけでもないはずです。
世の中、どちらとも言えない中で成り立っているもので、正しいも間違いもないという認識でいるほうが、だいぶ生きやすいんじゃないかと思いますね。

0 件のコメント:

コメントを投稿