「感情との付き合い方」
人間にとって、この感情という得体の知れないものとの折り合いをどう付けるかが、生きていく上でのテーマだと言えるでしょう。
感情は時に非常に厄介なものとして、私達を苦しめたりもします。逆に感情がなければ喜びも得られないということにもなります。感情が暴走して取り返しのつかないことをしでかす場合もあるでしょう。
また、感情があるからこそ、人は人間らしくあるとも言われたりします。
感情の対局としては一般的には理性と言えるでしょう。
物事を理性的に判断する、感情論ではなく客観的な視野で論理的な説明が出来る。
中にはあまりに理性的だと、感情が無い、機械的だ、とか言われたりもしますが、この能力もそれはそれで人間的であると言えるでしょう。
この感情と理性とのせめぎ合いを、人は常に頭の中で行っているのです。
感情を優先するか、理性を優先するか、それはその人の置かれた状況を自身がどう判断しているかで変わります。
その状況が及ぼす影響によってどういった反応をしているか、それを自分自身が意識的であるのか、無意識であるのかで、受け取るものは違ってきます。
ただ、感情は無意識との繋がりが強固なために、時に理性より勝ってしまう場合があります。
無意識で感情が発動してしまうと、理性は意識の外に追いやられてしまい、論理的な判断力は働かなくなってしまいます。突発的な怒りや、不安感などがそうです。
後から考えれば、なんであんなに怒ったとか、不安になったんだろうとか思ったりしますが、その時は感情が暴走してしまっているので、自分ではコントロール出来なくなっているのです。
この無意識に暴走する感情を、どうやったらコントロール出来るようになるのか。
そうやって心理学や脳科学が研究を重ねてきたわけです。
科学の進歩によって、人間の身体の働きが解明されてきました。脳の分野はまだまだ謎が多いのですが、近年の研究によって、その機能については多くのことが分かってきています。
それに基づいて、人間の身体的な機能を理解することで、感情や思考がどのように働くのかが分かります。
自分の中で感情や思考がどのように生まれてくるのかを知ることが、それをコントロールする第一歩です。
感情は脳の扁桃体によって司られています。この部分は原初の生命体であった頃からのものなので、生命を脅かす驚異や食物を得る喜びに直結して反応を起こします。
理性を司るのは大まかに言うと、大脳の部分にあります。状況を客観的に判断し思考する働きをしています。
扁桃体が生物として原始的な状態から存在していることに対して、大脳の部分というのは人間という種に進化すると共に発達してきた部分になります。
人間が、他の動物のように、常に生命の危機に晒されながら生きていく事はありません。しかし、進化の名残としては、命に関わる危機に対してのエマージェンシーに瞬時に反応するようにプログラミングされていると言えます。
この名残が無意識に働き掛ける事によって、感情が爆発したりするわけです。
人間の社会では、どうコミュニケーションを取るかが問題となりますが、実際はそれによって命の危険性まで発展することは滅多にありません。しかし、他人から攻撃されたりすると本能的に危機と捉えた扁桃体が反応し、感情を膨らませます。ストレスホルモンの分泌により、興奮状態を引き起こし、闘うか逃げるかという身体反応を強化させます。その際、余計な思考は瞬時の肉体反応には邪魔になると判断し、思考回路は停止するよう働き掛けます。
思考回路が遮断されるので、そうなったらコントロールが効かなくなるのは当然です。
解決策としては、扁桃体が反応する前に理性をもって自分を見つめることです。
感情が動きそう、と感じた瞬間に意識して、一度感情を手放すように努めると、暴走は防ぐことが出来ます。
現在の脳科学では、脳の可塑性という事について更に研究が進められています。簡単に言うと、脳細胞は再生(新生)されるということです。身体を鍛えると筋肉が増強するように、脳も鍛えた部分が発達するということです。
近年、脳トレとか盛んに言われているのは、この可塑性があることで、年を取っても脳は発達するからなのです。
さて、脳は鍛えれば強くなるということは、負の感情もそれをくり返すことで増強されると言っている事になります。
事実その通りで、自分に良くないことが起こったときに、常に怒りや悲しみ、憎しみなどといった負の感情を繰り返していると、扁桃体が肥大していくことが、研究によって明らかになっています。
逆に、そういう状況でも、ポジティブな考えを持つように繰り返し意識していると、扁桃体は縮小していきます。
意識的に自分の反応をポジティブに変えることによって、脳内の機能を変化させることが出来るのです。
感情をコントロールするには、意識的に脳を変えていくことでそれが可能になります。
そうなったとき、感情に左右されることなく理性的な思考ができるようになるのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿